消費税の軽減税率について(その3)


 来年10月に導入予定の消費税の軽減税率の解説3回シリーズは今回が最終回です。最終回の今回は、軽減税率の影響を受ける食品業界が実務上対応すべき以下の3つのポイントを説明します。

1.軽減税率が適用される食品関連業者の日常対応

2.軽減税率適用に伴う、請求書・レシートにおける消費税の表示方法

3.軽減税率導入に伴う、簡易課税制度区分の変更

1.軽減税率が適用される食品関連業者の日常対応

 前回もご紹介しましたが、ファーストフード店やイートインのあるコンビニなど店内飲食と持帰りの両方を取り扱っている店では、客が軽減税率(8%)が適用される持帰り品を注文し、その品を店内で飲食して軽減税率を不当に利用するケースが生じることが予想されます。しかしながら、現実的に持帰り品を店内で飲食していないか監視したり、持ち帰り品の店内飲食に対して経験分の追加請求をすることは、人材コストの面からも、顧客サービスの面からもあまり好ましくありません。

 そこで、国税庁が消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)の中で、「店内で飲食される方はお申し出ください」のような案内を店内に掲示したり(Q&A問41)、客から注文を受ける際の、客が、店内飲食かあるいは持ち帰りかについての意思表示に基づいて税率の適用を判断する(Q&A問42)が示されています。実際には店内で食べるにもかかわらず、「お持ち帰り」と客が意思表示をすれば軽減税率(8%)を適用してお持ち帰り用の包装をして提供するということになりそうです。

国税庁が消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)リンク:

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/03.pdf

2.軽減税率適用に伴う、請求書・レシートにおける消費税の表示方法

 消費税率が2つになることにより、例えば以下のような場合は2つの税率が適用されます。

 ・スーパーで、お酒と食材を購入した場合

 ・コンビニで、イートインでの昼食と自宅に持ち帰る夕食を同時に購入した場合

 ・スーパーが、同一の商社から食品と日用品を同時に仕入れた場合

 このような場合、税率引き上げ後の消費税の確定申告で、通常税率(10%)と軽減税率(8%)に区分して計算する必要があります。そこで、申告の際仕入税額控除の根拠になる、請求書やレシートには、消費税の金額や税込み金額だけではなく、商品・サービスごとに適用される税率区分と、税率区分ごとの税込合計金額を記載するよう求めています。

 具体的な対応としては、いくつかの方法が考えられます。

(1)商品・サービスごとの表示

・商品ごとに消費税率を明記する 例:コーラ(8%) ×××円、ビール(10%)×××円

・軽減税率が適用される商品に軽減税率適用の旨を記載する 例:コーラ(軽減税率) ×××円

・軽減税率が適用される商品にマークをつける 例:★ コーラ ×××円 

                        (★マークが軽減税率対象という意味)

(2)税率区分ごとの税込合計金額の表示

・消費税率区分を明記する 例: 合計(税込) 8%適用 ×××円、10%適用×××円

・軽減税率が適用される商品にマークをつける 例:合計 ×××円

                        (内訳 ★×××円、左記以外×××円)

                        (★マークが軽減税率対象という意味)

 なお、平成35年(2023年)10月1日からは「インボイス」と呼ばれる適格請求書の制度が導入されます。以下の特徴があります。

・適格請求書等を発行できる業者は、課税事業者に限定される

・適格請求書等発行事業者になるために税務署への届出を必要とし、税務署に届け出が認められると登録番号が付与される

・消費税確定申告の際の仕入税額控除は適格請求書等の合計額が原則となり、これまで認められていた消費税免税事業者からの仕入に関する税額の控除ができなくなる

・適格請求書等と認められるためには、請求書・レシートなどに登録番号の記載が必要となる

 来年10月から4年間は経過措置として「インボイス」のような厳密な取扱いはありませんが、将来のシステム改修・書式変更の手間を減らすためにも来年10月から「インボイス」を意識した請求書・レシートの様式変更・システム変更をご検討ください。

 なお、適格請求書等発行制度の概要、様式例は以下の国税庁HPリンクに示されています。

リンク:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

3.軽減税率導入に伴う、簡易課税制度区分の変更

 軽減税率制度導入に伴い、課税売上高が5千万円未満の事業者に認められている簡易課税制度も改正になります。

 具体的には、農林水産業(飼料作物・園芸作物・木材・観賞魚等食品販売に該当しない場合を除く)の場合の控除割合が、第3種事業70%から第2種事業80%に引き上げられます。理由は、農産物や水産物の売上には軽減税率8%が適用される一方で、仕入となる燃料や種子、肥料、漁具、機械、船舶などは食品でないことから10%の消費税が課され、厳密に仕入控除を計算した場合、仕入控除額が大きくなる(つまり、納税額が減少する)ことが想定されるためです。

 一方で、飲食店の場合、売上の大部分を占める店内飲食には10%の消費税が課される一方、仕入れの大部分を占める食材仕入には軽減税率の8%が適用され、仕入控除額が少なくなり、消費税の申告の際、納税額の増加が他の業種と比較して多くなる可能性があります。確定申告の際に納税資金が不足しないよう、留意いただきたいと思います。

 以上で今回のシリーズは終了です。軽減税率に対する正しい理解の一助になれば幸いです。

#消費税 #租税 #軽減税率

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